第1章

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「ソイツの為に遣ってやってるわけじゃないんだよな?先方の担当者と“いい加減に扱われる雑貨”が可哀想だ、って思ってんだよな?責任感持ってない奴等のそういう遣り方が許せないんだろ?」 口を挟む隙も与えられず、二人の会話はどんどん進んでいってしまって…私はキョロキョロと視線をさ迷わせながら、なんて答えればいいのかオタオタするばかりだった。 「第一、梢は何で二課と三課の仕事を把握してるのよ。一課だってかなり忙しいんでしょ?そんな余裕がどこにあるの?」 「情報共有の為に営業の共有フォルダの中には全員のスケジュールと営業日報が入ってるんだけど、梢はそれが頭に入ってるんだよな?どの営業が何時、何処で、どんな打ち合わせをしているかって覚えてるんだろ?それが頭ん中で整理されてるから急に仕事を振られても、何の資料なのか直ぐに検討がつくし対応出来るってことだよな?」 さすが!私の指導係りです! 私のことをよく理解出来てます! 深海さんの仰る通りなので口許を緩めてコクコクと頷く。 みんなのスケジュールと日報を読むことは私の楽しみなのだ。 これを言うと受け取り方によっては怒る人もいるかもしれないけれど…。 漫画や小説を読むのが好きな私は、スケジュールと日報を読むこともそれと同等に思っているところがあって、 新しい情報を読んでいるとまるで、楽しみにしている連載中の漫画や小説が更新されたような気分でワクワクしてしまう。 此処のお店の打ち合わせは此処まで話が進んだのかぁ…とか、 此処の担当者は結構遣り手の女性で、営業さんはちょっと四苦八苦してるなぁ…とか、 此処のお店ってアノ商品を置いても喜びそうなお客さんが来てるんじゃないかなぁ…なんて、想像だけで楽しめてしまうんだ。 だからその作業をあまり仕事の一環として捉えていないので全然面倒だとは思っていなくて、更新状況を確認するように毎日目を通している。 妄想族の私は…行ったことも見たこともない想像上の店舗に、大好きな雑貨が並べられて、お客さんがそれを楽しそうに嬉しそうに手に取っている姿を頭に浮かべてしまう。 共有フォルダを開く行為は、あくまでも自分の楽しみの為。 それがたまたま急に振られた仕事に役立っているだけにすぎないんだ。 「もしかして、雑貨屋巡りも相変わらずやってるの?」
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