第1章

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遥さんの言葉にもコクコクと頷いて答える私。 友達もいない、此れといった趣味もない私は就業後や休日の時間を持て余していて、楽しみといえば雑貨を眺めることだけ。 時間があると雑貨屋を覗きに行きたくなってしまう。 休日には6~7店舗フラフラと歩き回ることもザラで、新しい雑貨屋や雑貨を見つけては立ち寄り、手に取り、気に入った物は購入している。 その日立ち寄った店舗のことはメモに残していて、その情報が溜まっていくのも楽しみのひとつで、それを見ているだけで満足感で顔がニヤケてくる。 端から見たら危ない人に見えるかもしれない。 “オタク”ってこういう感じなのかな?なんて思うこともあるけれど、これが私の趣味といえば趣味なのかもしれないって思う。 だから私の部屋には様々な雑貨が所狭しと溢れかえっていて、それに囲まれて生活しているだけで幸せで満たされるのだ。 「梢は仕事が早いからイレギュラーな仕事が入っても一課の自分の仕事に支障を出さないんだよ。それを知ってるから一課の課長も黙認しちゃってんのかもしれないけど。だからって今の状態は絶対良くないと思ってさ…けど…それももうすぐ、なくなるかもなぁ、なんて期待してんだけど…。」 ……ん?……なくなる?…期待してる? 「…え?なんのこと言ってんの?」 私と同じような疑問を持った遥さんが深海さんに問い掛けているのをボーッと見つめる。 …期待してる、って……やっぱり何かが起きてる? 今月に入ってから続いている会議は何か関係があるの? それを此処で聞いてみてもいいだろうか。 聞いたら何か教えてくれるだろうか。 思い切って口を開いてみようかどうしようかと迷っていると、個室の扉が突然ノックされて私の肩がビクッと跳ねた。 「失礼します。お連れ様がいらっしゃいました。」 「ぁ、はーい!来た来た。」 扉の方を振り向いて急にニコニコし始めた深海さん。 誰か来る予定だったのかと答えを求めるように遥さんを見ると、キョトンとした顔で見つめてくる視線にぶつかり、私は首を傾げてしまった。 どうやら遥さんも知らないようだ。 開けられた扉に振り向くと、意外な人がそこに現れた。 「悪い。遅くなった。」 「いえいえ。お疲れ様です。どうぞ。」 「え、川瀬さん?!」 「よう!仁科。元気そうだな?」 現れたのは微笑みを浮かべた人事部の川瀬課長だった。
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