第1章

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商品を扱う顧客自身が購買意欲をそそられるような資料に作り上げないと次に繋がらないのだ。 「……時間もらえますか?…資料に目を通して…大まかなレイアウトを…そうですね…30分後に確認しますから、それまでは社内にいてもらえませんか?」 「ぉ、おう!わかった!助かるわぁ!ありがとう!じゃあそれまでは中にいるから声掛けて!」 顔を引き攣らせながら頼むだけ頼み、ジッと見つめる私の視界から消えようとサッサと去って行く蓑田さん。 仕事さえしてもらえるなら話したくもない私にでも簡単に頭を下げるなんて、とても滑稽に思える。 嫌だと思っていても結局引き受けてしまう自分も、他人のことを言えないくらいアホかも…。 でも仕事なんてそんなもんだと、いつの間にか割り切るようになってしまった。 ふーっと軽く息を吐き出して身体を正面に向き直し、資料に手を掛けた。 「バカだなぁ。何で引き受けちゃうんだよ。」 周りに気付かれないように座っている椅子ごと少しだけ近付き、小声で話し掛けてきた深海主任。 「自分とこのチーム内で何とかしろって言ってやりゃいいのに。」 「…あの会話聞いた後に二年目の私じゃ言えませんよ。それに…先方さんと扱われる商品が可哀想だからやるんです。」 「ん?蓑田を助けてやるんじゃなくて?」 「違います。新規の取引先なのにこの打ち合わせが上手くいかなかったら“何でそんな所と契約したんだ!”とか担当さんが上の人に怒られるかもしれないじゃないですか。」 「ん…まぁ、確かに…。」 「スタートで躓いて売上の数字に響いてしまったら、どちら側もこの契約自体が失敗に導かれて無駄になってしまう。それに…せっかく素晴らしい商品なのにエンドユーザーに買ってもらって喜んでもらえなかったら意味がありません。その為には最初の打ち合わせが凄く大事だと思うんです。」 私は資料に目を通しながら…主任はパソコンに目を向けながら…コソコソと会話を続ける。 「フッ、お前、本当に雑貨が好きだな。その気持ちはわかるし言ってることも尤もだけど…それでもお前がそれを遣るってことがなんか納得いかない。」 「ふふっ。こんなの今に始まったことじゃないじゃないですか。隣の仕事は何度もやってますし商品もわかってますから、チャチャッとやっちゃいますよ。」
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