第22章

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初めて会った時に『これ以上私の結婚延ばさないで!』と言っていた増田さんも、年明けにずっとお付き合いしていた人と結婚式を挙げて家族になった。 増田さんも結婚まで簡単に辿り着いたわけではないそうで、4つも年下の旦那様に知り合うまでも知り合ってからもいろいろあったらしい。 『幸せの形なんて人それぞれ違うんだから、誰かと比べるんじゃなくて自分たちが納得出来ていればいいのよ。いろんな形があって当たり前。思い合える人と一緒にいられることが何よりも大切で、一番の宝物になるんだから。』 きっと増田さんもいろんなことを乗り越えた今だからこそ出てくる言葉なんだと思う。 私の不安定な心を見透かしたような言葉をくれる増田さんと高杉さんを、私と遥さんは羨望の眼差しで見つめていた。 みんな表には出さないけれど、いろんなことを乗り越えてきているんだ。 どんなことがあっても諦めず着実に前に進み、自分のために相手のために努力しているんだということがわかっただけでも私には収穫だった。 周りの人たちにそんな面があることも知らず、世の中の人たちは普通に生活しているだけで幸せが舞い込んで来ているのかとどこかで思い込んでいた。 何故私は周りの人たちと同じことが出来ないのだろうと卑屈になり、自分だけが世界中の不幸を背負い込んでいるような気になって何もかもを諦めていた。 そんな風に考えていた自分が恥ずかしい。 そんな恥ずかしい自分に気付けたのは、周りの人たちと関わることが出来るようになったからだ。 人は1人では生きていけない。 素敵な人たちに巡り会えると心が豊かになって、幸せな気持ちも笑顔も増やすことが出来る。 彼と一緒にいるようになってからいろんな人たちと関わるようになり、そのことを強く実感した。 その巡り合わせが化学反応を起こし、お互いに変化をもたらす。 ただの顔見知り程度だった人との付き合いが一歩二歩と距離を縮め、お互いを理解しあえるようになり、 仕事上だけの付き合いだった人とそれ以上の関係になり、励まし合い助け合ったりすることが出来るようになった。 毎日必要以上に口を開かず、一人黙々とパソコンに向かっていた私が、そこに思いやりが生まれ、大変なことを乗り越える力が湧いてくることも知り、楽しく仕事が出来ることは幸せなんだと言うことにも気が付いた。
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