第22章

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本当に勿体ないことをしていたものだと過去を悔やむ。 遥さんの話からみんなの近況を知り、どんなことがあっても乗り越えることで新しい家族を増やすことも出来るんだなぁと考えると、いつかは自分も…と、これから先の自分人生がどんな風に変わっていくのか楽しみになってきた。 つい少し前まで、周りに関わらず1人で生きていこうとしていたなんて、今では考えられない。 私も彼とそんな風になれるのかなと、遥さんとの会話を楽しみながらそう遠くない未来に思いを馳せていた。 『今日ちょっと飲みに行かない?』 少し仕事が落ち着いてきた頃、デスクに向かっていた私の傍に近付いてきた胡桃が、耳元でコソッと飲みに誘ってきた。 最近ではこんなことも珍しくなくなってきた。 遥さんからの連絡で高杉さんや増田さんと女子会をしたり、 このフロアの久世さん以外のアシスタントたちもすっかり仲良しで、仕事が落ち着いてきた時期になると女子会をするようになっていたから。 ただ今日の胡桃はちょっと雰囲気が違う。 いつもならお昼休みにみんなが揃っているところで『女子会しましょ!』と話題に出すのに、こんな風にコソコソ話してくることはないからだ。 どうしたのかと顔を上げると、此方の様子を窺うような、どこか落ち着かない空気を纏っている胡桃がいた。 何かあったのだろうか…。 でも仕事の面では別にトラブルも起きていないし…だったら他に何か? 「いいよ?二人で?」 コソコソ話してくる胡桃に合わせて私も小声で返すと、首と手を同時に振って否定している。 二人じゃないなら、他に誰が? 疑問に思い首を傾げて見せるけど、「詳しいことは後でね」と自席に戻って行ってしまった。 わからないことだらけだけど、私のことをわかっている胡桃なら変な人を連れて来ることはないだろうと残業にならないように仕事に意識を戻した。
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