第22章

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就業時間から30分ほど残業になってしまったけど終わらせると、待ち受けていた胡桃に連れ去られるようにしてフロアを出た。 会議で席を外していた彼には、仕事の合間にメールで胡桃と飲みに行くことになったと伝えてあった。 エレベーターに乗り込むと胡桃が携帯を取り出し確認し始めたので、私も同じように自分の携帯を取り出す。 〈飯塚と二人で?珍しくないか?〉 表示された彼からの返信に口許が緩む。 同じ想いを抱いていることに笑みが溢れてしまう。 チラッと見ると携帯に何やら打ち込む姿が目に入ったので、私も彼に返信しておく。 〈何だかいつもの胡桃と様子が違うので何かあったのかもしれません。他に誰が来るのかは今のところ不明です。帰る時に連絡しますね〉 そう送信すると胡桃も終わったのか携帯をバッグに仕舞いながら振り返り、「ちょっと遅れるって言ってるから先に始めてよう」と言う。 僅かに胡桃から感じる緊張感というか神妙な雰囲気に直ぐにでも聞き出したいところだけど、グッと我慢して頷き、違う話題を振った。 会社を出る時からは高木さんと久世さんの話題になり、私たちの口が止まらなくなる。 そのまま最寄り駅近くの居酒屋に入り、予約していたのか奥のこじんまりとしている部屋へ案内された。 飲み物と空腹を満たせるようなおつまみを幾つか頼むと、自然とさっきまでの話題に戻り、「久世さんはどうにかならないのかねぇ」と愚痴を溢す。 私は二課と三課に背を向けて座っているので詳しい状況はわからないが、胡桃は三課が見える位置の席のため目に付くのだと言う。
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