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「江藤課長がビシッと言ったから多少は遣ってるみたいたけど、明らかに遣らされてる感満載なのよねぇ。自分の置かれてる状況わかってんのかなぁ。」
グビグビとビールを流し込みながら鼻息荒く話す胡桃の意見は尤もで、渡された資料や伝票の処理をダラダラと時間をかけて熟していることは神田さんや辻崎さんからも聞いていた。
「江藤課長に言われたことは単なる脅しくらいにしか思ってないのかな…それとももう諦めたとか…。」
「だったら自分から辞めればいいのよ!あの人がいるだけで空気悪くなるわ!」
確かに三課のモチベーションは落ちるかもしれない。
神田さんと辻崎さんの処理能力が上がってるから何とかなっているというのは彼からも聞いていた。
江藤課長もこの先どう指導すべきかと頭を悩ませているらしい。
このままでいったら年明けには江藤課長が最後通告をして、本当に人員補充申請を出すと言い出すかもしれない。
「腹心だった高木さんが私たち側についたのも面白くないんだろうねぇ…管理部の人たちもすっかり真面目に仕事するようになったみたいだし、他の部署も変わったでしょ?社内で完全に孤立してるから遣る気なんか出ないのかもなぁ。」
あそこまで言われて遣る気にならないってことは、辞めてもいいと思っているのかもしれない。
帰ったら彼に、江藤課長がどう考えているのか聞いてみよう。
「あー、あの人の話してると本当ムシャクシャしてお腹空く!梢、なんか頼まない?」
梢らしい言葉に思わず吹き出し、そういえば他に誰が来るのか聞いていなかったと思い出して、
「ねぇ、誰か来るって」と言い掛けたところで個室の襖が突然開いた。
「悪い!課長に捕まっちまった!」
いきなり入ってきた人物に口を開けたままポカンとする私を余所に、二人は普通に会話を進める。
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