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「お疲れ様!どうしたの?何か問題でもあった?」
その人は胡桃の方を見ながら声を掛けると当たり前のように彼女に向かって足を進め、私がいることを気にしていないかのように躊躇することなく胡桃の隣に腰を降ろした。
正面の胡桃はその人の声が聞こえた途端、弾かれるように顔を上げるとそれまでの表情とは一変させ、喜びを溢れさせた表情に変わった。
その人に問い掛けながらも隣に置いていた荷物を移動させて席を空けてあげたり、当たり前のようにテーブルの端に立ててあったメニューに手を伸ばして広げて見せている。
そんな二人の仕草ひとつひとつは何でもないことのようだけれど、でもその些細な仕草に慣れを感じるのは気のせいだろうか。
その前に何故この人が現れたのか?
他にも誰か来るって言ってたのはこの人のこと?
突然現れたこの人にも胡桃の変わりようにも呆気に取られて、私はただただ見つめていた。
「いや。問題ってわけじゃなくてさ、○×百貨店の次の催事にウチの商品出すことになったって話したろ?今あっちにバイヤーが行っててな。その人が『まだ日本未発売のいい商品見つけたから今度の催事に出してみないか』って連絡あったらしくてさ……」
いきなり始まった興味をそそられる仕事関連の会話にいつもなら私も食い付くところだけど、話に着いていく処かボーッと呆けてしまっている私は完全に置いてきぼりにされている。
目の前の二人はそんなことお構いなしで近い距離で見つめ合い、話しているんだけど…。
この人はいつもこんな感じだと言われればそんな気もするが、胡桃の様子は明らかにいつもとは違っており、聞きたいことがありすぎて口を挟みたいけれどそんなことも出来ずに二人を観察していた。
多少疲れが滲んだ表情で仕事の話をしていてもリラックスした空気を醸し出しているその人は、隣の胡桃に面倒がらずに判りやすく説明していて、気になったのか胡桃の頬に掛かる髪を優しい仕草で後ろに流してあげていて…
胡桃は恥ずかしげに頬を緩ませながらも今まで見たことがないほど柔らかい表情でその人の話に耳を傾けていて、ウンウンと相槌を打っている。
その人は話を続けながらも胡桃が開いて持つメニューにチラッと視線を落とすと「あ、俺ビールと串盛りな」と話の合間にそう一言挟めば、
胡桃はメニューを片付けながら流れるような動きで呼び出しボタンを押して直ぐにまた向き直り、
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