第22章

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たまにしか視線を上げずに目の前の料理に目線を落としている酒居くんははにかんでいるように見えて…もしかしたら照れ臭くて目線を合わせないように誤魔化しているのかもしれないと途中で気が付いた。 胡桃は大人しくビールにちびちびと口をつけながら、たまにチラチラと酒居くんと私を見ているだけで黙っている。 入社してから毎日顔を合わせているけれど、こんな胡桃を見るのは初めてだ。 まぁ毎日顔を合わせていたって仕事場で素を出しているとは限らないし、私だってアシスタントのみんなといても仕事モードが抜けないのだから知らない顔があったって不思議ではないのだけれど。 黙っている胡桃ははにかんで見える酒居くんとは違って、少し微妙な表情なのが気になる。 「それでな、翌朝起きて「腹減った」って言ったらメシ作ってくれるって言うから、一緒に買い物行って作ってもらってさ。それが予想外に上手くて余計にその気持ちが強くなった。だから正直に話したんだ。そしたらコイツも同じだって言うから、それから付き合ってる。」 一通り話終わった酒居くんは恥ずかしげではあるけれど堂々としていて、仕事をしている時とはまた違った男らしさを感じた。 「…そうだったんだ……ねぇ、聞いてもいい?」 「いいよ」という酒居くんに「その前から胡桃のこと意識してたの?」と聞いてみた。 たまに休憩所で三人で話すことはあったけれど、二人からはそんな空気を感じたことがなかったから。 元々意識していたのか、それとも急に気持ちが変わったのか不思議でならなかったのだ。 「んー、自分でもよくわかんないんだよなぁ…」と視線を遠くに飛ばし、何かを思い出すように酒居くんは話し出した。 「入社してからずっと課は違っても同じフロアにいて、気を遣わずに話せる同期ってしか思ってないと思ってたんだけど…あの時をきっかけに胡桃を女として見ても違和感を感じてない自分に気付いたっていうか…コイツと一緒にいたら楽しいなぁとか、隣にいて欲しいのは胡桃かもとか…とにかく一緒にいて落ち着くし、なんかしっくりくるんだよ。」 酒居くんの話は自分の身に起きたことに似ていた。 私も彼と一緒にいるようになって同じように感じたことだったから。
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