第22章

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「その人に会ってみたいなぁ。あんなに頑なに人と関わることを避けてた志築をこんなに変えたわけだろ?年上ってだけじゃなくて、きっと人間的にスゲー人なんだろうなって思うからさ。」 変化した私を通して想像した"彼"がそう見えるのかと考えると、改めて彼の偉大さを感じる。 彼が私に与えた影響だけでなく、今は社内のあちこちで見られる変化を見てもそれは明らかで… 彼の仕事に対する姿勢や思考に心を動かされてウチの部署が変わっただけじゃなく、問題視されていた管理部門の膿も排除することが出来たし、他部署の管理者たちが動き出すきっかけにもなった。 そういった意味でも彼の存在はとても大きい。 社長は彼を大阪から呼び戻した時に此処まで想定していたのだろうか。 そんな凄い人が私の"彼"というポジションにいることが今でもたまに現実味を感じなくて不思議に思ってしまうし、 そんな人の"彼女"というポジションに私がいてもいいのかと何度思ったかわからない。 それでも、彼がいない毎日を想像することはもう私には出来ない。 彼がいてくれるから私は過去に拘らず前を向けるようになったのだし、一歩踏み出すことも怖くなくなった。 だからそんな彼とこれから共に生きていく約束が出来た時は本当に嬉しかった。 彼の一番傍で彼の全てを見続けていけることを許された気がして胸が熱くなった。 彼と一緒に歩いていけるこの奇跡に感謝するとともに、彼の隣にいても恥ずかしくない自分でありたいと思うようになった。 でも…みんなが私たちのことを知ったらどう思うだろうか…。 ありのままの私たちを受け入れてもらうことは出来るのだろうか…。 その事を考えると不安しかなくて胸が苦しくなってしまうけれど…。 「人生の先輩ってだけじゃなくてもいろいろ話してみたいんだよなぁ。教えてもらえることが沢山ありそうだし。指輪をもらってるってことは、近い将来そういうこと、なんだろ?そういうことも含めていろんなこと聞いてみたいしさ。だからいつか会わせてくれよ。な?」 『そういうことも含めて』なんて、酒居くんは胡桃とのこれからもちゃんと考えているってことだ。 その言葉を受けてチラリと胡桃に視線を向ければまだ涙は残っているものの、頬を染めて恥ずかしそうに口許を緩ませている。 二人の間でそういう話も出ているということだろう。
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