第1章

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小さなお店だったけれど見たこともないような欧州のキッチン用品や可愛い文房具・玩具が所狭しと並べられていて、その空間にいることで雑貨と店長さん夫婦が私の心を癒してくれたんだ。 だからこの会社に入れた時、成長した自分を見せられたような気がして、少しは恩返し出来たかな…と勝手にだが思って心が軽くなった。 しかし社会は甘くなく…我が社は大手ではないものの、そこそこの規模を誇る社内には様々な人間がいて、多くの問題を抱えていた。 仕事自体は楽しいけれど人間関係に疲れたと言って辞めていく人が絶えなかった。 全部署で常に人員不足という状態が続いているこの状況を重く見ている人たちはいても、どうすることも出来ずに未だにこの状態なのだと。 人付き合いが苦手な私に指導係である深海主任は、就業後にご飯に連れ出しては“あの会社の現状”と“上手く生き抜くための遣り方”等を教えてくれた。 『問題対象となる人物は、録な実績もないくせに役職についているオジサン社員とお局たちが中心なんだけどな…』と。 勿論全員ではないが…。 セクハラ・パワハラが横行しているというその話は社長たちの耳にも入ってはいるけれど、リアルタイムで伝わっているわけではないので動きようがないらしく…。 実被害を訴えてから辞める退職者が少なく、対象者たちにその件を仄めかしてみても上手くかわされてしまい、手をこまねいているうちに遣りたい放題になってしまった、ということのようだ。 何年か前にコンプライアンスに力を入れてみたようだけど…問題人物の中に人事部長も入っているためか上手く機能していない、というのが現状らしい。 新人時代のそれに耐え抜いた人たちが昇格して中堅クラスになっていたりするが、その人たちの中にも問題人物予備軍がいるらしく、それが更に頭を痛める問題になっているのだと…。 一部の人たちが水面下で動いていて何年にも渡って情報を集めていたようで、それがそろそろ動き出すんじゃないかと深海主任はみているようで、 『だからな?お前も理不尽なこと言われてムカつくこともあると思うけど、グッと堪えとけよ?そのうちこの会社は劇的に変わるだろうから。ストレス解消くらいなら付き合ってやるからさ。』 『はぁ…。』 一年目夏くらいに初めてそう聞いてから此処まで来たけれど、今のところ社内に変化はない。
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