1 私の世界の全て

2/9
前へ
/55ページ
次へ
気が付くと私の世界のほとんどは、黄ばんだ壁に囲まれた二階のこの部屋と、部屋の前の廊下と、二階のトイレ、それからLANで繋がる電脳の世界だけになっていた。 それでも、電脳世界は無限に広がっていて、私に色々なことを教えてくれる。 孤立しているように見えても、そこにはきちんと人間関係も存在しているし、それを眺めているだけでも、ある意味繋がっていると感じられた。 眺めているだけでも。 外の世界は穢れていて、私のような弱い人間では、とても生きていけない。 そう実感したのは去年の秋口頃だったろうか。もうそろそろ一年の月日が経つ。 その詳しい内容については、記憶が曖昧でよく思い出せない。 とにかく全てが面倒臭くなったのだと思う。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加