疲れた…もうイヤだ…

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ここは力だけが正義、大魔王に支配された世界。 大魔王は地下迷宮の奥深くで我々を支配し、世は悪魔や怪物たちが闊歩して好き勝手に暴れ回っている。 もちろん、我々人間だってただ黙ってそれに甘んじているわけではなく、剣と魔法を武器に大魔王を倒すべく、大勢の冒険者たちが危険な地下迷宮に挑んでいる。 そりゃ、心も荒む。 毎日、毎日、戦いの日々。何日も風呂に入れず、トイレなんてないからその辺で。 戦士と言えば無骨な髭ボーボーのむさ苦しいおっさんばかりで、鎧の脇からはツンとした臭いが洩れてくる。 怪物どもだって、見るだけで食欲も失せるような、キモい連中ばっかりで、そいつらを切り倒せば臭い体液が飛び散るし、油断すりゃ大けが、下手すりゃ命も落とす。 そんな掃きだめの世界に、俺の姿を見れば…だ。 俺自身も、わからないことはない。 地下迷宮で出会う女たちは、みんな俺を見ると目がハートになる。 軽装の鎧の隙間から覗き見える細マッチョな二の腕と厚い胸板。 もちろんむだ毛なんてものはない。俺は軽い潔癖症で、自分自身が臭いのが嫌だから冒険中でも清潔であることを忘れない。風呂も入るし、洗濯もきっちりやる。迷宮内でそれを実現できるのは、仲間の一人、魔法使いのクラークのおかげだ。水の魔法、火の魔法、風の魔法っていうのはこういう使い方もできる。 仕上げはムスクを含んだシトラス系の香水。 実は魔物を避ける効果があるために、欠かさずつけているものだ。 そんなわけで、俺が率いるパーティは迷宮内でもひときわ優雅で華麗で美しい、そんな特別な集団だった。 「とどめだ!」 俺が流れるように剣を振るう。 ドラゴンは断末魔の呻きをあげて、地に伏した。 地下四十九階。 かなり深い。怪物たちもかなり強い奴らばかりいる。 大魔王のいる魔界の玉座はだいぶ近い。 俺は形ばかり気にする半端な冒険者ではない。実力も相応に兼ね備えている。 上級デーモンやドラゴンの類いでなければ、大抵は一撃で倒す。 仲間たちも俺に負けず劣らず頼れる連中ばかりだ。
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