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「なんだここは…」
黒頭巾で顔を覆った黒装束の、盗賊ピートが重い鉄扉を解錠して開くと、そこは鉄格子が並ぶ牢獄だった。
見れば各牢屋には、裸の女たちが閉じ込められていた。
ピートは腕利きの盗賊だが、本業では王侯貴族しか対象にしない「義賊」だ。彼の素顔を知る者は少ないが、実はかなりのイケメンだ。
「あなたたち…冒険者ね!?助けて!私たち、大魔王に連れ去られて、こうしてここに閉じ込められているの!」
俺たちに気付いた一人が叫ぶ。
それを口火に、牢屋がガシャガシャと騒がしくなる。
出して、出しての大合唱だ。
「うるせー、たまんねーな。おい、クラーク。こんな数を一個一個開けてたら日が暮れるぜ。解錠の魔法で一気に開けてくれ」
ピートが耳を塞ぎながら、魔法使いのクラークに言う。
ピートもかなりのイケメンだが、実はクラークもイケメンだ。魔法学校を主席で卒業した優秀な魔法使いで、学長が娘の婿にしたいと懇願した逸話を持つ。
解錠の魔法は疲れるからやらない。といつもなら無碍もないクラークもあまりの騒々しさに了承した。
「オ・ペンザ・ドゥアー!」
クラークが呪文を唱えると、牢獄の鍵という鍵が一斉に解錠した。
閉じ込められていた女たちは一斉に牢屋から飛び出し、こちらに駆け寄ってくる。
そして、俺の姿を見つけると、目がハートになって飛びついてきた。
「ありがとうございます、勇者様!」
「勇者様!」
「勇者様!」
どいつもこいつも。
はじめはある程度遠慮しがちに手をふりほどいていた俺だったが、次から次から女たちが飛びついてくるものだから、次第にイライラしてきた。
「俺はただの戦士だから」
「鍵開けたのは、俺じゃねーから!」
「離せ、もうっ!触るなっ!」
きゃあきゃあいう女たちは、次から次からやってくる。ピートやクラーク、タイラント、ベック、そしてドラン。イケメン揃いの俺の仲間たちには目もくれず、まっすぐに俺のところへ。
「相変わらず、女にモテモテだな」
ドワーフの戦士、ドランがニヤニヤとひげ面にニヒルな笑みを浮かべた。少しばかり背が低いながら、渋いダンディズムに溢れたおっさん戦士だ。
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