28人が本棚に入れています
本棚に追加
駐車場に車を停め、浅井は暗くなった空を見上げて小さく息を吐いた。
あれからさらに三日が過ぎた。
はじめのうちは飄々としていた瀧川も、次第に事が重大になってきたことに気づいたのか、 不安げな表情で保健室を訪ねてくるようになった。
自分たちではどうしようもないと言いながらも、自ら動けない歯痒さに、少し苛立っていたようだった。
数日前に会った燈路のゲームの相手も心当たりを探してみるとは言っていたが、 なにも連絡がないところをみると、情報は得られてないらしい。
探しようがないのは事実。
それがわかっているからこそ、焦れったくて、堪らない。
どうしようもないとわかっているのに、それでも、なにかを欠片を探してしまう。
手の中をすり抜けて、捕まらない存在。
本当に、どうしようもないくらい、苛々する。
駐車場を抜けて、マンションの入り口に足を進めた。
暗闇の中、薄っすらと光る街頭。
何気なく、視線を向けて、おもわず足を止めた。
マンションの壁とその横にある街頭の影に隠れて、黒光りした物体が見える。
太いタイヤと、黒いボディ。
そして、その間から僅かに覗かせる、汚れたスニーカー。
弾かれたように駆け出した。
「おい!」
でかいバイクの後ろで、壁に寄りかかって死んだように動かない身体に、おもわず手を伸ばした。
「早坂!」
両肩を揺さぶると、燈路は僅かに身動ぎをして、ダルそうにゆっくりと薄く眼を開いた。
「ん・・・・」
虚ろな眼で何度か瞬きをして、燈路は浅井の顔を見て、小さく笑った。
「・・・・ひさしぶり」
「このバカが・・・・ッ!」
苦しげに顔を歪ませて、浅井は燈路の頭を自分の胸に押しつけた。
一瞬、小さく呻いた燈路が、すぐにその胸に擦り寄るように身体を預ける。
「ああ・・・・アンタの匂いがする」
「・・・・」
消えそうなくらいの小さな笑い声と共に、燈路が胸の中で呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!