2nd GAME

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 抱きかかえた身体をベッドにそっと下ろして、浅井は小さく息を吐いた。  見た限りでは多少の擦り傷はあるにせよ、どこか怪我をしているという様子ではない。  汗と土の匂い。  どうやら、ただ疲れ果てて、動けなくなっただけらしい。 「・・・・ったく」  猫のように丸くなって眠る身体を眺めて、浅井は長めの髪をかきあげた。  浅い呼吸を繰り返すその寝顔に手を伸ばして、静かに頬を撫でた。  なんて自虐的なんだろう。  痛ましいくらいのその姿が、なぜか愛しいと思った。  自分を追いつめることで、なにかを得ようとしているのだろうか。  この華奢な身体全体で、なにかを感じようとしているのだろうか。  頬に触れた手を離して、ベッドの傍らに腰を下ろした。  テーブルの上にある煙草に手をかけ、火を翳す。  ゆっくりと煙と一緒に吐き出されたのは、安堵とも似たため息だ。  訊きたいことが山ほどあった。  あったはずだった、少し前まで。  でも、それは、自分が燈路のことを知らなすぎたからこそ、思ったことだと知った。  十日もの間、燈路はきっとなにかを探していたんだと思う。  それが刺激か、はたまた温もりか。  わからないけれど、それでも、なにかを見つけだそうとしたんだと、漠然とだがそう思った。  なにを見つけたい?  なにが、欲しい?  喉の奥から出かかった言葉を、無意識のうちに封印した。 「・・・・なあ」  突然の声に、おもわず肩を震わせた。  振り返ると、ベッドに寝転んだままの燈路と眼があった。 「・・・・起きたのか」 「起きてたんだよ」  いつもの声とは少し違う、どこか気だるさを感じる声色。  それに眉を寄せて、浅井は煙草を灰皿に押しつけた。 「寝てろ。ぶっ倒れるぞ」 「・・・・」  その言葉にも燈路は力なく首を振って、天井に視線を向けた。  どこか一点を見つめながらも、その口元からは疲れを感じさせる吐息が洩れる。  どこかやつれたような雰囲気の中で、虚ろげな視線はいつもと違う色を放っていた。
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