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机に頬づえをついて、ぼんやりと外を眺めた。
太陽は真上。
あまり日当たりがよいとはいえないこの部屋も、太陽がてっぺんに昇ったときは僅かな光が差し込んでくる。
来客のこない日は平和でいい。
先ほどまでそこのベッドで寝ていた風邪引きの生徒は帰らせたし、サボるためにここに入ってきた生徒も追い出した。
それでも保健医かよ、と笑いながら悪態をついていたヤツらも、たぶん、他のサボり場所に移動したはずだ。
昼休みということで、うかうかしていたら他の生徒が流れ込んでくる。
浅井は手にしていたボールペンを放り投げ、傍らに置いてある愛用の空気清浄機のスイッチを入れた。
職員室に行けば、喫煙所というものが一応設けられてはいるが、他の年配の教師を相手に煙草を吸ったって、ちっとも落ち着きやしない。
やっぱり、落ち着く場所で一服するのが一番なわけだ。
いつものとおり、ドアの札を外出中にして、鍵を掛けようと立ち上がったとき、おもむろにドアがノックされた。
それに軽く舌打ちをして、椅子にどかりと腰を下ろした。
「どうぞ」
本当に調子が悪そうだったら帰らせる。
サボリだったら追い出す。
そう心に決めて、ぶっきらぼうに言いながら回転椅子をドアの方に向けた。
ガラガラという鈍い音をたてて開いたドアから覗かせた顔に、浅井は顔を顰めた。
「なんだ、おまえか」
「なんだとはなんだよ。相変わらず冷てえな」
笑いながら入ってきた男子生徒は、浅井の傍らにある空気清浄機に眼をやった。
「もしかして一服するところだった?」
「ああ」
その返事に、男子生徒は当たり前のように外の札を外出中に置き換え、鍵を閉めた。
「なんかしばらくきてなかったせいか、懐かしい感じがするな」
愉快そうに辺りを見回しながら、男子生徒は中央においてあるソファーに腰を下ろした。
咥えた煙草に火をつけ、ゆっくりと煙を吐き出しながら、浅井は男子生徒に視線を向ける。
「もうこないと思ってたんだけどな」
にやりとした笑みを向けると、男子生徒は笑いながら「まあね」と呟いた。
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