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「ショックだったんだろ」
「え?」
「親の離婚も、親に頼られたことも。拒絶されたと思ってたのに、突然それを翻されたことも。 だから自暴自棄になったんじゃねえのか?」
その言葉に、燈路は考えるように首を捻った。
「・・・・否定はできないな」
「否定する必要なんてねえだろ。それが事実だ」
「アンタ、結構痛いとこ突いてくるね」
苦笑を洩らして、燈路はさらに言葉を繋げた。
「まあ、それで命捨てようとしたんだから、俺もまだまだガキってことだよね」
二本目の煙草を指に挟みながら、燈路はにかりと笑った。
流した涙の理由と、その意味と。
とめどなく滑り落ちたその数だけ、なにかを思えばいい。
なにかを感じればいい。
二度と、胸の奥が、涙で溢れないよう、そして、枯れ果てないよう・・・・。
自分の手で、なにかを掴み取ればいい。
そっと手を伸ばすと、燈路はきょとんした表情で小さく首を傾げた。
そのとぼけた顔の前で動きを止め、茶色い髪で隠れる額を指で弾いた。
いてッ、と小さく呻いた燈路の手から、煙草を掠め取る。
「なに・・・・」
「もっとうまく生きろよ」
「え?」
命は限りなく短く、限りなく長い。
その距離を、生かすも殺すも自分次第なのだから。
掠め取った煙草に火をつける。
一瞬眼を瞬かせて浅井を見つめていた燈路が、小さく苦笑を洩らした。
「そうだね」
眼を細めて、燈路がゆっくりと微笑んだ。
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