28人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・・ったく、なんでおまえらまでついてくるんだよ・・・・」
賑やかな街の中心街を歩きながら、燈路は後ろを振り返り、ため息がてらに口を開いた。
「そんなこと俺に言うな」
つまらなそうな表情の瀧川の横で、仁は相変わらずの不機嫌面でフンと鼻を鳴らした。
「ただ知り合いに会いに行くだけだって・・・・そんな恐い顔するなよ」
先ほどから感じる刺々しい視線に、燈路はおもわず肩を竦めると、仁はさらに鋭く燈路を睨み上げた。
「おまえの言うことなんか信用できるかよ」
「酷・・・・」
自分が行方不明だった約二週間もの間、瀧川の話によると、仁の落ち込みようは相当なものだったらしい。
五分に一度は携帯を眺め、授業なんてものは耳にも入らなかったらしく、ほとんどのノートは白紙だったとかなんとか。
今日の朝、ひさしぶりに会った仁は、自分の顔を見るなり、いつもはほとんど表情すら出さないその顔を歪め、勢いよく抱きついてきた。
ぎゅっと唇を噛み締めて、いまにも泣き出しそうなその眼に見つめられて、いまになって、後悔の念に晒された。
そんな仁の表情を見るのははじめてで、不謹慎だけど、 自分の存在は仁にとって、思っていた以上に大きなものだったのだということを、いまさらながら確信した。
「すっかり信用なくしたな」
瀧川が心底愉快そうににやりとした笑みを浮かべた。
「煩えよ」
「ザマーミロ」
ケラケラと笑う瀧川は、どうやらこの二週間、仁にちっとも構ってもらえなかったのが相当おもしろくなかったらしい。
当然のことながらその怒りの矛先は自分に向いて、 夕べ無事を伝えるために電話した瀧川に、深夜まで愚痴話を訊かされる羽目になった。
まあ、自業自得といえば、それまでなんだけど。
「なあ」
大きな交差点で足を止めた燈路の横に立った瀧川が、小さく声をかけた。
「ん?」
その顔を見上げると、瀧川は、少し離れたところで信号待ちをしている仁をちらりと見て、視線を戻した。
最初のコメントを投稿しよう!