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「・・・・言っておくけど」
浅井はゆっくりと口を開いた。
「俺もおまえが欲しい」
「・・・・」
「もう、逃がすつもりはねえよ」
そう言って、浅井はにやりと笑った。
さらにきつく握られた腕を感じて、燈路は笑みを零した。
そして、そのまま浅井の肩に頭を預けた。
擦りつけるように、何度も、何度も、その存在の大きさを確かめた。
息を吸い込むと、煙草の匂いに交じって、微かな大人の香り。
「あー・・・・もう、俺、アンタのことすげー好きかも」
「かも、かよ」
浅井は笑いながら、燈路の髪に手を差し入れた。
ふわりと頭を撫でるあたたかい手。
きっと、その手の中にも、詰まっている。
自分と同じように、きっと、なにかを感じている。
それは、胸を打つ、緩やかな刺激。
そのくすぐったい疼きは、なにかを手に入れた証なのかもしれない。
「・・・・そういうことか」
なにかに気づいて呟いた言葉に、浅井は「ん?」と小首を傾げた。
それに苦笑を返して、ポケットから携帯電話を取り出す。
受信ボックスから開いたメールを表示させると、それを見た浅井が一瞬眼を瞬かせ、おかしそうに笑った。
「なるほど、な」
きっと、もう、自分には必要ないだろう。
追い求めることもしないだろう。
手を伸ばしたいものは、もう、ひとつしかない。
携帯の画面を見つめ、燈路はゆっくりと微笑んだ。
そして、まだ笑いの零れるその唇に、そっと触れた。
二週間ぶりに電源を入れた携帯は、大量のメールを受信した。
そのほとんどが仁と瀧川からのものだったが、最後のひとつは、マヒトからだった。
そこにはたった一言。
『ゲームオーバー』
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