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「担任もなにも訊いてねえって慌ててるし、俺らも何度も携帯に電話してみてるんだけど、 電源切ってるのか、やっぱ繋がらねえ・・・・」
「・・・・そうか」
二日と空けずにここに訪れるようになっていた見慣れた顔。
そういえば、最後に会ったのは一週間ほど前のことだった。
そのときの燈路の様子を思い出しながら、浅井は長めの髪をかきあげた。
「燈路、よくきてただろ?」
ゆっくりと身体を起こしながら、男子生徒が浅井に視線を向けた。
「ああ。よくかどうかはわからんけどな」
「アイツ、浅井ちゃんには懐いてたからな」
「どうだか・・・・」
「燈路って、あんまり自分の懐に他人を踏み込ませないような節があるからさ」
刺激が欲しい。
そう言いながら、燈路は、いつも遠くを眺めていた。
掴めないなにかを掴もうとしていたのか。
にこりと笑う笑顔の裏は、少し儚げだった。
まるで、そう。
捨てられた子猫のように、寂しげな眼をしていた。
「だから、浅井ちゃんは知ってると思ったんだ」
小さく首を傾げると、男子生徒はにこりと笑った。
「アイツ、表面上はしっかりしてるけど、どこか危なっかしいからな。 浅井ちゃんのことは受け入れたんだと思ってた」
「・・・・考えすぎだろ」
呟きながら、浅井は新しい煙草に火をつける。
その仕草に小さく苦笑を洩らしながら、男子生徒は口を開いた。
「今回のこともよくわかんねけど、燈路なりの考えがあるんじゃねえかって実は思ってる」
「おまえは心配してるんだかしてないんだかわからねえな」
「心配はしてるさ。ただ、アイツはバカじゃねえからな。俺らがどうこう言う前に、自分で動けるヤツだろ。 まあ、俺より仁のほうが心配で心配で堪らねえって感じだけど」
「ああ、おまえの片割れか」
茶化したようなセリフに、男子生徒は苦笑混じりに「まあね」と呟いた。
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