現実

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恨みや妬みなど負の感情が、黒い靄となって身体中に渦を巻く。 全てが覆われようとした瞬間。お葬式で泣き崩れていた、美優の母親の姿が頭に浮かぶ。 私が女を恨めば、影の男がこの女を殺しかねない。 そんなの嫌、もう誰も殺したくない…!! 女に対する悪意を必死に鎮めていると、背後に気配を感じた。 振り向かなくてもわかる、人間離れした男の身体。 私が動けずにいると、背後からぎゅっと抱きしめられる。 今までは夢なのか、現実なのかさえわからなかった。 これは、夢なんかじゃない。 この男によって、殺意のまま美優や男達を殺してしまった。 このままじゃいけない。 この男から逃げなくては…! 男の腕から抜け出そうと、手で身体を押し返す。しかし、抵抗すればするほど身体の力が抜けていく。 影の男はゆっくりと私の服を脱がせ、身体を優しく弄ぶ。 力が抜けた身体は抵抗する気力も削がれ、ただ快感に落ちていく。 もう、戻れないところまで来てしまったのかもしれない。 英司と女の戯れ合う様子が頭に浮かび、それを振り切るように快感を求め、自ら腰を動かした。 悪魔と契約をしたら、最後は命を取られると、どこかで読んだことがある。 この男は、悪魔なの…? 底知れない恐怖を感じながらも、身体は快感に浸っている。 私はすでに、人間ではないのかもしれない。
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