現実

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「はぁ…そんなに俺に抱かれたくないのかよ!」 いつまでたっても濡れない私に、英司が声を荒げる。 どうして… 今までそんなこと、一度もなかったのに。 気ばかり焦り、ますます感じられなくなる。 「……うっ!!」 突如、喉元まで胃酸が込み上げ、裸のままトイレへと走る。 少し吐くと気分は戻ったものの、英司のいるベッドに戻る気にはなれない。 しばらくトイレの中にいると、英司がドアをガンガンと叩く。 ドアを開けると、そこには服を着た英司が立っていた。 「もう少しで騙されるところだったよ…お前、妊娠してるだろ?」 妊娠…? 言葉が詰まった私を、英司がドンと突き飛ばす。 「俺の子にするために、関係を持とうとしたのか?この浮気女」 誘ったのは英司でしょう…? それに、私が身体を許したのは英司だけ。 「妊娠してるなら、英司の子しかありえない。私は浮気なんてしてない」 「俺はゴムを付けなかったことなんか、一度もない」 まさか…嫌な予感が頭に過ぎる。 英司は何も言い返さない私を、鋭い目つきで睨み付けた。 「もうお前とはこれっきりだ。じゃあな」 部屋から出て行こうとする英司に、追い縋る。 「英司の子だから…お願い、置いていかないで」 英司は泣いている私の手を振り払い、唾を吐き捨てて去って行った。
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