新種

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 間違いない。作り出されたネコは交配を繰り返して現在までその遺伝子をのこしてきたのだ。あれが地元の人間が祟りと呼ぶ原因に違いない。あれがいるから彼らはこの島に近寄らないのだ。そしてあの写真を撮った学生は、おそらくあのネコの餌食になったのだろう。もしかしたら旧日本陸軍の人たちだって終戦を待たずに……。  息せき切り、海が見えるところまで来て、私たちはたたらを踏んで立ち止まった。  船に乗るための桟橋。そこを封鎖するように、その手前に大量のネコがいた。その全てがじっと私たちのことをみつめている。太陽は西の水平線に沈みつつあった。 「あれは、普通のネコ、だよな?」 「たぶん」と友人が答えると同時に、集まったネコたちが左右に分かれ始めた。  その間を、銀色に輝く毛並みが進んでくる。  そいつは夕陽を受けて光る目を細め、「ニャア」と鳴いた。  その瞬間、ネコの一群は私たち目がけて突進してきた。
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