謎の声

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俺は、その声に反論しようとしたが、隣に被害者家族がいるので、気を静めることが出来た。 我々の眼前に血と脳漿にまみれたゴム手袋をした外科医が現れた。 娘の母親が「娘の容態は!?大丈夫なんでしょうか!?!?」 と外科医に泣き泣き尋ねる。 外科医は、ゴム手袋を外しながら 「不幸中の幸いでしたよ!もう少し打ち所が悪ければ娘さんは、ここに居なかったでしょう。手術の方は無事成功しました。しばらくの間は、絶対安静ですよ。また後で...」 と言い病室を後にした。俺がまだ被害女性の様子を伺っているとまたあの声が喋り掛けてきた。『おいっ!お前こんなところでグズグズしていていいのか!?お前には今日大事なミーティングがあるんじゃないのか!?早くこんな所からうせろ!グズグズしてるとミーティングに間に合わなくなるぞ?それでもいいのか?』 俺は、一瞬金縛りにあったかのようにその場で身動きが出来なくなってしまった。「お前は一体...!?今日の打ち合わせは、体調不良で休みにしてもらう...」 『そんなことどうでもいい。お前のそんな下心丸出しの偽善なぞオレにはお見通しなんだよ!そんなことやったってお前にはなんの特にもならないんだよ。お前は時間を無駄に費やしただけだ。早く、そいつらに断りを言って会社に戻れ。』 「ちょっとあなた大丈夫?顔色が良くありませんね..」 病院の看護婦さんが、俺に心配そうに声を掛けてくれた。俺は、笑顔でそれに応じた。
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