2章 野蛮刃

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「今の世の中に剣持って鎧着てなんて奴が居たら、即刻通報されるんだ。だから、案内の前にまず着替えてもらうぞ」 正座をさせられたエリミラの前には、きれいに畳まれたスーツのセットが置かれていた。 「男物だし、ちょっと大きいけど、鎧着てるよりはマシだろ」 エリミラはスーツやシャツを開いては眺め、着用方法の確認をする。 そして畳み直し、軽くお辞儀をする。 「ありがたくお借りします。着替えますので、その……」 「あ、ああ、悪い。出来たら呼んでくれ」 別室に移った涼は、しゃがみこんで頭を垂れ、自身を恥じた。 常識が違う吸血鬼とはいえ、相手は女である。 最低限の気遣いはするべきであった。 「これでどうでしょう、おかしな所はありませんか?」 申し訳なさと共に顔を上げると、そこには上品な若き紳士が居た。 彼女は現代のスーツを見事に着こなして見せたのだ。 髪を縛ったこともあり、男と言ってもなんとか通用するだろう。 「似合うな」 「ありがとうございます。さて、案内を頼みたいのですが……」 「ああ、悪い。俺も着替えるよ」 涼は厚手のパーカーにジャンパーを羽織り、寝癖を軽く直して準備を終えた。 その間、エリミラは涼の就活マニュアルを読んでおり、現代の知識を吸収しようとしていた。 「さて、まずはどこに案内しようか」 「ここ最近、猟奇的な殺人が相次いでいると耳にしました。出来れば、その現場に向かいたいのですが」 正直なところ、あまり気が乗らない場所ではある。 しかし、今後の事を考えると、彼女の要望には応えるべきであろう。 「分かった。でも、警察が進入禁止にしてるだろうし、中には入れないぞ?」 「構いません。傾向がを知るには十分です」 何の傾向かは、敢えて聞かずとも分かった。 彼女は、何か対策を講じるつもりなのだろう。
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