2章 野蛮刃

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一箇所目、そこは涼の自宅から徒歩で20分ほどの一軒屋である。 一家5人がバラバラ死体となって発見され、近隣住民に恐怖を与えた事件だ。 「やっぱり、まだ警察官がいるな」 発生当初より数は減っているが、現場を調べている鑑識官は数人ほど残っている。 「次に行きましょう」 「え、もう?」 「彼らに関わらないほうがよいのでしょう?それに、私には十分分かりました」 建物の外観を少し眺めた程度だが、彼女はこれで十分だと言い切った。 涼は戸惑いながら、次の場所へのルートを確認し始めた。 二箇所目は住宅地内の空き地だ。 ここでは、帰宅途中であったと思われる女性が腹部から真っ二つにされて死亡していた。 時間が経過したことで、既に警官の姿は無い。 立ち入り禁止の立て札が立ち、鎖がかかってはいるが、跨げば簡単に出入りが出来る。 「こっちには誰もいないな。何か分かりそうか?」 「はい。魔性の痕跡は人とは違いますので、何の始末もしていないのであれば問題はありません」 エリミラは空き地に入った後、涼から説明を受けるまでもなく、一直線に現場へと進んでいった。 その後、しゃがみ込んで手を翳し、呪文のようなものを唱え始める。 目に見えて何かが起きているわけではないが、魔力と形容すべきものを行使していることは、契約者である涼には手に取るように分かった。 「終わりました。先程の場所とこの場所、現れた魔性は同じ存在であると特定できました」 「ホントかよ。さっきの場所、チラっと見ただけだろ?」 「魔性の残留魔力は、離れていても感知できるほど強いものでした。恐らく、強い興奮を感じて魔力を放出したまま気付かなかったのでしょう」 「何を言ってるのかサッパリ分からん」 解説しようと考えたのか、彼女が口を開こうとする。 しかし、何かに気付いたようにその動きは止まり、険しい表情となる。 「ところで、リョウ。こんな言葉を知っていますか?」 「何だよ、黙ったり喋ったり……。どんな言葉だ?」 「犯人は、現場に戻ってくる」 答えた瞬間、エリミラの右手から剣が出現する。 そして前進し、涼の肩を掴み、自身の後方へと押し飛ばした。
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