1章 闇はいつも隣に

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夜の闇と身を裂く冷たさに包まれた、都市化が進む神楽市中央とその外れ。 そこでは増加した凶悪な猟奇殺人の対応に追われる警察官があちらへこちらへと走り回っており、出歩く者などほとんど居ない。 「三丁目でバラバラ死体発見だそうです」 「二丁目では飼い犬が腕を咥えて来たとよ」 「どうなっちまったんだ、この街は」 数ヶ月前から連続して発生している猟奇事件は、市民はおろか警察すらも恐怖に染め上げていた。 犯人の手がかりはなく、同一犯なのかどうかすら掴めない。 発狂した何者かが現場に居合わせたこともあるが、その後の調べで犯人ではないと立証されている。 「次は俺達のうちの誰かが仏になるんですかね」 「滅多なことを言うんじゃねぇよバカ。不謹慎だぞ」 本来はあってはならない発言だが、軽口でも叩いていないと仕事にならないのだ。 彼らも本当は、早々に切り上げて家に帰りたいに決まっている。 「さっきの事件はデカ共が対応に向かった。俺達の仕事はこの辺りのパトロールだけだ。さっさと終わらせるぞ」 「了解っすよ、先輩」 パトカーは夜の街を走る。 不気味な静けさの中を、僅かに血生臭い風を纏いながら。
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