1章 闇はいつも隣に

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光が収まり、目を開いたとき、そこには先程までそこに居た筈のナニカではなく、凛とした立ち姿の女性が居た。 肩まで伸びた黒髪と、紅く輝く眼。 赤と黒の鎧は、いつの日か創作物の中で見た姫騎士と言われる人物のものとほとんど同じだ。 「あなたが、私を召喚したのですか?」 その女性は、落ち着いた声で問う。 何が起きたか分からない涼だが、彼女の背後に忍び寄る驚異には気がついた。 「う、うし、後ろだ!」 ナニカが彼女の肩を掴み、首筋に牙を突き立てようと迫る。 しかし、その牙が届くよりも先に顔面を肘で叩き割られ、ナニカは大きく体勢を崩す。 よろめいたナニカの胴体を、彼女は力強く蹴り飛ばし、壁に叩きつけた。 「話は後、と言うことですね。まずは敵の排除からです」 彼女が手をかざすと、まさに闇の塊と形容すべきものが現れる。 それは次第に伸びていき、闇もまた晴れていく。 完全に闇が晴れたとき、そこにあったのは漆黒の剣であった。 「お前一体……何者なんだ?」 「すぐ済みます。そこに居てください」 剣を両手で構え、起き上がるナニカを睨み付ける。 ナニカは怒りに吠え、彼女に襲いかかる。 「冥界へ還れ、名も無き悪魔よ!」 降り下ろされた漆黒の剣は、ナニカの頭頂部に直撃する。 そしてまるで豆腐でも斬るかのように、あっさりとナニカを両断する。 実際に経過した時間は数秒にも満たないのだろうが、涼にはそれがスローモーションのように見えていた。
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