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時間にして数秒で、彼女の食事は終わった。
血を吸われる奇妙な感覚は無くなったが、痛みはまだ残っている。
血を吸われたためか、頭がぼんやりとしているものの、意識はしっかりとある。
「これで契約は完了です。これを先に済ませないと、私はあと数分で消えてしまうところでした」
「……うん、教本にも書いてある」
内容を確かめながら、涼は頷く。
彼女に関する説明と言うよりは、何者かを呼び出した場合全般の解説のようだが、彼女自身の説明と相違はない。
「まだ名前も聞いていませんでしたね」
「ああ、済まない。俺は時永涼、大学生……といっても分かるかな」
「リョウ、ですね。明日までには今の世の知識を深めますので、お気になさらず」
実際、分かっているわけではないようだ。
もしかしたら、現代の道具や施設については知らないものも多いのかも知れない。
「ところでリョウ、あなたの右手を見てください」
「右手?……うわっ!」
言われた通りに右手に視線を写したリョウは、甲に紋章のようなものが浮かんでいることに気がついた。
コウモリと目玉をモチーフにしたと思われるそれは、独特の不気味さを醸し出していた。
「契約の証です。それがある限り私はあなたの剣であり、あなたは私の能力の一部を扱えます。その証拠は、首の傷に触れてもらえれば分かるかと」
「首って今度は……あれ?無いぞ?」
エリミラに噛まれた筈の傷が無くなっていた。
いつの間にか、痛みもなくなっている。
「私の能力の一つ、超再生です。少しの傷なら、数分で治癒します。人間でなくなったわけではありませんので、ご心配なく」
血を吸われた事と疲労が重なり、半ば理解が追い付かなくなりつつあるが、とにかく今は話を聞くことだけに集中した。
どうしても分からなければ、いずれ落ち着いたときに尋ねれば問題ない。
付き従うと公言している以上、こちらの質問にも彼女は答えると、涼は考えていた。
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