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「これは辛いぞ。どうする後藤選手。いや、しかし余裕の表情を浮かべているぞ。これはどうした? 後藤選手、斉藤係長の横に移動してパソコンを覗き込んでいますね」
『係長。メールを確認してください』
「これはもしかしますよ……」
「何か心当たりがあるんですか?」
「少し様子をみましょう」
「係長は怪訝な顔でメールを開いていますね。おっと。顔が引きつっていくぞこれはどうした?」
『その資料はすでにまとめて係長に送ってありますので確認してください』
「おおっと。これは凄い! 先に振られる仕事を予測して時間内に終わらせていたー!」
「思考の先読みですね。これはかなり高度な返し技ですよ。さすがにやりますね後藤選手」
「後藤選手。頭を下げて係長の前から立ち去ろうとしています。これは試合終了か?」
「いえ、係長も歴戦の兵です。このまま終わるとは思えませんよ」
「なるほど。ここから、逆転の一手があると。おっと、斉藤係長動きました。後藤選手の腕をつかんでいますね」
『私の仕事が終わっていないのに先に帰るつもりかね?』
「おおっと。これは強権発動だ。ほとんどパワハラです」
「いえ、帰るつもりかねと聞いているだけで、帰るなとは言っていませんからね。ぎりぎりのラインを攻めてきています」
「後藤選手は言葉につまっていますね」
「係長と後藤選手は同じプロジェクトを担当していますからね。反論しにくいでしょう」
「これは残業コースか。いや、後藤選手の後ろに数人の人たちが近づいてきましたね。後藤選手の後輩です」
『後藤さんは自分の担当の仕事はすでに終わっていますよ』
「おそるおそるではありますが、後輩からの援護射撃ですね」
『私たちはチームだろう。チームで遅れているところがあれば同じメンバーとして手伝うのは当然ではないのかね?』
「もっともな正論だー。これには後輩も口をつぐむしかありません」
「言っていることはまともですが、残業代を稼ぐために就業時間中にタバコばっかり吸って仕事をしていなかった係長には言われたくない言葉ですね」
「後輩が恨めしそうに係長を睨んでいるー。どうする? 後藤選手。このままだと後輩も残業に巻き込まれかねません」
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