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【夜桜】
昔の男を呼び出した。
未成年との恋…それは犯罪に値するね…と、昔の男は笑った。
女は聞いた。
どんな人が合うと思う?
昔の男は告げた。
貴女には、年上が合うと思う。
期待した言葉ではなかった。
少しショックだった。
でも、そうかも知れない。
オードブルと、テキーラを一杯だけ味わい、店を出る。
夜桜が名所の道は、直ぐ側だというのに、その方向へは進まずに、
キラキラと光り輝く看板に、吸い寄せられるように、私達は移動する。
愛し合う二人や、そうでない関係の人達も向かうであろう場所へと。
朝帰りの家。
リビングに入ると、いつものラジオを付ける。
いつもの大人の男性の落ち着いた素敵な声が、聞こえてくる。
そして、いつものフレーズが流れた。
恋を始めるなら春の方がいい。
散る花を見る淋しさを埋められるから。
来年こそは、桜を見よう。
女は誓った。
【完】
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