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 智也の母は、眉を八の字にし目が垂れ目になって しまった。息子を心配する母の姿だった。 (お母さんにも、教えてなかったんだ、安西君……)  そんな中、奈々はスフレ風パンケーキを焼きあげた。 今日はサービス。バニラアイスも添える。勿論、先程の 女性客のスフレ風パンケーキにも、バニラアイスを添えた。 「元気出して下さい」  奈々は、姉の恋人と智也の母の前にパンケーキと 珈琲、そしてバニラアイスを置いた。  智也の母は、微笑した。少し元気になったかもしれない。 「ありがとうね。こういう時、甘い物食べて 元気出さないと」  気を取り直し、フォークを手に持つ。唯が、 先程の三人組の客席に、パンケーキを運んだ。カウンター 席では、警官二人がパンケーキを頬張っていた。  橋口は唯の顔を見てから、猛烈な勢いで食べ始めた。 「あぁ、うまいなぁ。焼きたてのシフォンケーキ みたいだ」  傍らでは気を取り直した智也の母が、笑顔で 頷く。こめかみに当てていた手は今、頬に当てられている。
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