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 それ以降、由奈は店に来店しなかった。奈々は少し 寂しさを感じた。メレンゲに何かを投入した事で 罪悪感を感じ、来店しなくなったかもしれない。  陽射しもすっかり春になった。梅の花が咲き誇り 春の到来を意味している。とはいえ、まだ三月。冬を 引きずる寒さだけは残っている。  けれども陽も随分長くなった。駅ビルの ファッションテナントのウィンドウも、春服で いっぱいだった。  智也とは学校で会っても互いに挨拶は交わさない。 何しろ、智也はアイドルだ。奈々が話しかけると普通科の 女子生徒にどんな視線を返されるのか、想像しただけで 理解出来る。  それを機に、智也も来なくなってしまった。 姉の告げ口が気に入らなかったのかもしれない。  それには申し訳なさと、寂しさを感じたが それより智也があの女子大生と幸せに 交際しているのなら、それで良いと胸に刻んだ。  智也の母や唯の恋人、橋口は三日に一回くらいの割合で 通ってくれる。
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