690人が本棚に入れています
本棚に追加
何か大切な話があるのだろうか。奈々は何となく
そんな予感がした。それは唯も察知したようだ。唯は慌てて
外に出た。
そしてプレートを『close』に変える。こんな日に限って
スフレ風パンケーキの予約が夕方入っていないのは、この
時間を授ける為に、神様が与えてくれたかもしれない。
重たい空気が降りて来た。何となく苦笑い
を誘う沈黙も店内に満ちた。
そんな中、父がカウンターに腰かけて微笑む。
「おいおい、二人共幽霊を見るような顔をしていないで
水でも最初は出してくれないかね」
その言葉に二人共、ハッとする。
「あぁ、そうね。ごめんなさい」
唯はグラスに慌てて水を注ぎ、二人の前に
置いた。
メニューを見ずに由奈が今度は口を開く。
「春色パンケーキと、ミルクティを」
何となくせいいっぱい笑顔を作っているように
見えた。
思わず奈々は緊張しすぎて、少し言葉が濁る。
「か、かしこまりました」
最初のコメントを投稿しよう!