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 その言葉に、姉妹はついつい目を丸めてしまった。 そして互いに顔を見合わせた。  奈々は重い口を開いた。 「あ、あの……」    その前に聞きたい事は他にもあった。父と来店したと いう事は、父とはどういう知り合いなのか。あの時 メレンゲに水か油を投入した理由も問い正したかったが、 何となく、その一言で奈々は大体分かった。  おそらく、彼女は自分と智也との仲を誤解していた だろう。だから意地悪しようと、メレンゲを泡立たなく した。  奈々を困らせたかった。おそらく智也と交際していたのは 『期間限定』だろう。由奈は智也が好きだった。多分 由奈は、引っ越す。短い期間でいいから付き合ってほしいと 言ったに違いない。  奈々はそんな事を推測しながら、ボウル内で 生地を混ぜ合わせる。姉はメレンゲを機械で泡立てている。 時折、レモン汁を投入するのも忘れない。  奈々は少し心が落ち着いた所で、由奈に尋ねた。 「あの、父とはどういう知り合いですか?」
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