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 智也の両親は、肩をガックリ落としていた。 「帰ろうか」 「そうだな」  そんな会話を交わし、三人で駅へ向かって行こうとする。 そんな三人を奈々は引き留めた。 「あの!」  三人は一斉に振り向き、視線が奈々に集中した。 奈々は、微笑む。 「どうぞお入り下さい」  智也の両親は、えっ。と遠慮がちな表情をした。 智也は視線を下に落とし、奈々と視線を合わせようと しない。しかし奈々は気にしなかった。  智也の母の方は、きょとんとしている。 「いいの?」 「はい。最後にパンケーキ食べに来てくれたんですよね? どうぞお入り下さいな」  奈々は携帯を手に持ち、姉を呼び出す。 店のドアはすぐに解錠された。  智也の両親は逡巡しながら、奈々の顔を見た。 「知ってるのかい?」  今度は智也の父が奈々に尋ねる。  奈々は笑顔で、こっくりと頷いた。 「えぇ。由奈さんからお聞きしました。 お二人共、駐在所に転勤になったと。せっかくですから 食べて行って下さい」
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