新下町のパンケーキカフェ ～謎はパンケーキにのせて

６

　母親に促された智也は意を決し、真顔で前を見た。
「俺もスフレ風パンケーキ」

　奈々は営業スマイルで応答する。
「かしこまりました」

　唯が早速、電動泡立て器でメレンゲを泡立てる。
奈々がその間からレモン汁を投入した。

　その様子をジッと見ていた智也の父が
「へぇ」と驚きの声を上げた。

「メレンゲにレモン汁入れるんだ？」

　それには母親が、隣で説明する。
「うん。ですって。そしたらメレンゲが
早く出来るらしいわ」

　すると、智也の父は感嘆した。
「へぇ、すごいな。流石だなぁ。いやぁ、たまげた」

　江戸っ子のような言い方に、奈々はプッと吹き出した。
「お父さん、面白いですね」

「いや？そうか」
　照れながら智也の父は笑う。店内に楽しい雰囲気が
満ちた。智也も静かに微笑みを浮かべていた。

　智也の微笑みを見て奈々はホッとした。
ずっと怒っているかと思っていたからだ。