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 三人共同じメニューなら、作りやすい。固いメレンゲ が出来上がると、もう一つの材料を混ぜ合わせていた ボウル内にメレンゲを投入する。  これが三人に食べてもらえるパンケーキだと思うと 寂しさで胸の中がいっぱいになる。  奈々は慎重に鉄板の上に、生地を流した。メレンゲの力と 少しのベーキングパウダーの力が加わり、どんどん生地は 膨らんで行く。すっかりスフレ風パンケーキを焼く事に 慣れてしまった。  小さな風船のように膨らんで行くパンケーキを 安西の両親は、楽しそうに眺めていた。智也の父が それを眺めながら言う。 「へぇ、いいな。旨そうだな。甘い匂いとバターの 匂いがここに座ってると一番鼻について、いいんだよな」 「そうね。私もカウンター席が一番好き」  智也の母は、少女のような笑顔を見せ目を閉じた。 智也の父は頷きながら、髪を少しむしる。 「あぁ、休みの日は、ここまで食いに来ようかなぁ」  名残惜しくて仕方がない様子だ。
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