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智也が寂しそうに、パンケーキをフォークで切りながら
見つめていた。
「もう、これ、食べられなくなっちゃうのかな」
智也としては転校したくなさそうだった。奈々は言葉が
見つからず、黙っているしかなかった。唯も同様のようだ。
転校したくない智也を黙って見ていた。
智也の父が、寂しそうにぼやく息子を窘める。
「土日、予約して食いに来たらいいじゃないか?」
「うん……」
しかし、まだ寂しそうだった。智也はフォークを置いて
ぼやく。
「何か、警察って転勤ばっかだな。小学校の時はさ
豊洲に行ったり、立川市に転勤になったり、八王子に行ったり
二、三年おきにあるんだ。たまったもんじゃないよ」
そんな中、唯が口を開く。
「智也君、うちもそんなもんよ。父は転勤族でね。
今は、函館。この前まで東京に帰って来てたけど、また函館に
戻っちゃった。そんな家庭は、結構いっぱいあるんじゃないかな。
きっと警察だけじゃないよ」
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