10/14

687人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
 奈々は流石、姉だと、唯を尊敬の眼差しで見た。 奈々も慰めの言葉をかけたかったが、言葉が見つからなかった。 まだ十七の奈々には、語彙が足りなかったのかもしれない。 「奈々も結構、小さい頃から寂しい思いしたのよ。 お父さんは、夜遅いし、お母さんは保育士だったしね」  唯に同意を求められ、奈々はうん。と頷く。 すると智也の両親と、智也の視線が奈々に集中した。  親が転勤族だと結構、子供は振り回される。智也も 奈々と同じような経験をして育って来たのだと、理解した。 「そっか。奈々ちゃんも寂しい思いしたのね」 「うん、けど今は、地に足がついて将来の目標もあって 偉いじゃないか」  智也の父は何かと、奈々を褒める。褒められる度 くすぐったく感じる。奈々はまたえへへと照れ笑いを浮かべた。 「そっか。じゃぁ、俺も頑張ろ。あっちの学校でも」  智也はそう述べた後、元気よくパンケーキを頬張った。 温かい時間が店の中を流れていた。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

687人が本棚に入れています
本棚に追加