687人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
奈々は流石、姉だと、唯を尊敬の眼差しで見た。
奈々も慰めの言葉をかけたかったが、言葉が見つからなかった。
まだ十七の奈々には、語彙が足りなかったのかもしれない。
「奈々も結構、小さい頃から寂しい思いしたのよ。
お父さんは、夜遅いし、お母さんは保育士だったしね」
唯に同意を求められ、奈々はうん。と頷く。
すると智也の両親と、智也の視線が奈々に集中した。
親が転勤族だと結構、子供は振り回される。智也も
奈々と同じような経験をして育って来たのだと、理解した。
「そっか。奈々ちゃんも寂しい思いしたのね」
「うん、けど今は、地に足がついて将来の目標もあって
偉いじゃないか」
智也の父は何かと、奈々を褒める。褒められる度
くすぐったく感じる。奈々はまたえへへと照れ笑いを浮かべた。
「そっか。じゃぁ、俺も頑張ろ。あっちの学校でも」
智也はそう述べた後、元気よくパンケーキを頬張った。
温かい時間が店の中を流れていた。
最初のコメントを投稿しよう!