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メレンゲに水を入れられて意地悪されたのも
つい最近の事だが、遠い思い出となってしまった。
桜が咲く前はそんな寂しさが漂っている。
奈々は今、また新しいパンケーキを作る為、
思考を練っていた。明日から春休み。少し出歩いて
他の店にパンケーキを食べに行こうと思っている時だった。
「あ、ここにいた」
右から声が聞こえた。
(ん?)
前には智也が立っていた。制服姿のまま。
智也は奈々の隣に腰かけた。
奈々はついつい幽霊でも見るような目で、
智也を見てしまった。
「あれ?何でいるの?帰って引っ越しの準備しなくて
いいの?」
「いや、引っ越しは辞めた」
「え?は、はい?」
辞めたとはまたどういう事だろう。両親の転勤は
決まった筈だが……。
「俺はここに残る事に決めたんだ」
その言葉に意表をつく。また奈々は「はい?」
と問い返した。
「どうせ、あと一年で卒業じゃないか」
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