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その夜、屋敷の中で一番若い召使に連れられて、我はその召使の部屋に入ることを許された。
なんでも、寝る前に見ていたテレビが恐いものだったらしく、添い寝兼ボディーガードとして我が選ばれたようだ。
全身をぎゅっと抱きしめられ、側から離れないようにされるのは、かんべんしてもらいたいが、いつもの寝床の冷たさを考えると、しばしがまんすることにした。
やがて、召使が寝息をたてはじめ、我の束縛がゆるむ。我は召使の頬に顔をよせ、ひげをわざと擦り付ける。大丈夫、完全に夢の中だ。
我はほうっと一息つくと、ゆっくりと召使の腕の輪からするりと抜け出し、大きく伸びとあくびをしてた。
しばらくその場で全身を毛繕いしながら、召使が目を覚まさないかと注意をはらう。目を覚ましたら、また、羽交い締めにされるであろうからな。
召使は、ときおり寝言を言い、身体を動かすが、目覚める気配はない。
……まずいな寝言がひどい。添い寝の役は終わったようだが、もうひとつのめったに行うことのない役をすることになるかもしれない。
我は召使の布団の上で丸くなり、じっと虚空を見つめる。
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