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我は塔をかけ登り、悪夢に向かってとびかかった。げ、渾身の攻撃を避けるのではない!
我は気を落ち着け、鋭き爪を取り戻すために、手を舐め顔をこする。
ばくが心地よい声で歌い出す。ばくの歌声で悪夢が皮を剥くようにバラバラと崩れていく。そうして崩れた部分を、我が噛む、引っ掻く、蹴るを繰り返す。そうして小さくなったものをばくが喰らう。
それを繰り返すうちに、悪夢が煙のように、すうっと消える。しばらくすると、召使達が起きてくる気配がした。
――暴れすぎたか?
せっせと顔を洗い、毛繕いをして、ドキドキする心をおさえる。
我の名を呼ばれる。我は駆け寄り思いっきり身体を擦り付け、まとわりつく。
と、召使が悲鳴をあげた。
どうやら、悪夢の欠片の残りがネズミへと変貌していたようだ。
さては、ばくの奴め……
だか、召使らにネズミを狩って暴れていた。と、思われ、我の大好物のおまけ付きのご飯にありつけるのだから、文句はいうまい。
朝の慌ただしい時間がすぎ、屋敷は静かな時間へと移る。と、ばくが移動する。
ばくよ、もう行くのか?
……そうか、悪夢はつきないからな。
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