第一章 怪物と友愛のはざま

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 とても正気とは思えない。  「わ、私は学生なんですよ、そんなの警察に通報すればいいじゃないですか」  「こんな話、警察じゃ信用しません!」  それを聞いて、(誰だって信じないよ)と、思いつつ、「あのお、どうやって戦えと?」と、訊けば、さらにぶっ飛んだ返事だ。  「合体すれば上手くいくはずです!」  なんだか嫌な予感がして、さらに詳しく尋ねれば、「文字通りですよ! あなたと合体したい! 小さな子供じゃないんだから! わかるでしょう!」と、熱弁をふるう。  これを聞いたなり、景子は「うっひぃ~!」と叫びながら、全力で逃げ出した。  正真正銘SFオタクの変態だ。顔を隠しているのも正体がバレないようにするための変装に違いない。    *  翌日、景子はげんなりした表情で高校へ登校した。  (なんなのよ、昨夜の変態は、今日は友達と気分直しにカラオケで騒ぎまくるぞ)  そんなことを考えながら登校すれば、下駄箱に青い包装紙に赤いリボンの小さな箱が入っていた。  「なんじゃこれは?」  《フライング》だと景子は考えた。  (プレゼントする日を間違えたんだわ――なんだか残念な奴ね)とは思いつつ、悪い気分はしない。ニヤニヤと笑いながら教室に行くと、「おはよう、景子!」と、同じ空手部の三田香(みたかおり)が声をかけてきた。  「ねえねえ、あんたもらった?」  「なにを?」  「プレゼント、あれってホームルームで担任に預けなくちゃいけないんだって」  「なんで? 意味不明?」と、言いながらカバンから箱を取り出すと、三田は「そう、それ、青い箱」と、箱を指差した。  三田は噂話が大好きで、情報通として知られている。
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