第一章 怪物と友愛のはざま

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 「あ、あんた、大丈夫なの!」と、景子が問えば、首をかしげながら「えへへへ!」照れ笑いをして、「今日、なんだか暗いね」と、冗談を言う。  もうたまらず三田と景子は抱き合って、「いやあああああ!」と叫び声を上げる。  あまりに気持ち悪い北島だったが、怖がっている場合ではなかった。景子が出したプレゼントの箱から黄金の色をした丸い形をした物体が小型のプロペラで移動してきて、ペッタリと三田の額に貼り付いたのだ。  「ぎゃあああ! 熱い! 熱い!」  もうもうと額から煙が上がり、三田から肉を焼いた時と同じ生々しい匂いが漂った。  「こいつ!」と、景子はカバンを振り上げて丸い物体を三田の額から叩き落としたが、《丸いもの》はよほどの高温らしく、カバンが発火して炎に包まれた。  「あっちち!」と、景子はカバンを手放した。  (こんなのおでこにひっついて、大丈夫かな?)  心配になって見てみれば、三田の額にできた火傷は酷い。肉が溶けて、わずかに焦げた頭蓋骨が見えている。景子は北島がなぜ穴だらけの顔になってしまったのか理解できた。  あの怪人の予言通り、発熱する《丸いもの》が、皮膚や筋肉を焼きながら北島の体に潜り込んだのだ。  あの穴の数から考えても、北島の体内には《丸いもの》が幾つも入っているのが予想できた。  (じゃ、じゃあ、北島さん、ゾンビになったの!)  北島だけではなかった、蜂の巣になっているのは同じクラスの野球部の中鷹隆弘(なかたかたかひろ)も同じで、バカ笑いしながら学生服を脱ぐと上半身裸になった。  ナルシストで人前でも平気でパンツ一枚になれるやつだが、腹、胸、背中は真っ黒な穴だらけ、まるで漫画に出てくる機関銃で撃たれた犠牲者のようだ。
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