夜の海の端で周波数を集める。

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立ち上がったわたしを見て、ぎょっとしたような声が上がる。 「ちょっとお前、なんつー格好してるんだ」 「え、ああ、綺麗な服でしょう」 うふ。笑う。たいていの男の人はこれで黙ってくれる。 「綺麗とかどうでもいいだろ。ちょっとこれ着てろ。馬鹿じゃねーの、そんな薄着で」 「あなたが寒いでしょう?」 「もう一枚あるからいい。ワンピース一枚だけの女の横でぬくぬくしてられるかって話しだわ、馬鹿」 はい、とジャンパーを押し付けられる。袖を通すとまだ体温の残った温かいジャンパーだった。なんだか少し、涙が出そうだった。 「え、しかもお前、裸足……?」 「うふふ。シンデレラに靴は要らないのです」 おどけて言ったら、心底呆れたようなため息が聞こえた。ノイズを相変わらず吐き出すラジオをポケットからどうにか引っ張り出す。指先が凍えて言う事を聞いてくれない。かちかちと奥歯が鳴る。 温かいものを知ると寒さが骨の髄まで沁みるように感じる。だからきっとわたしはこんな薄物のワンピース一枚で靴も履かずに駆け出したんだろう。 どこから? あ、ええと、忘れてしまった。 「あー、もういいや。いや全然良くないけど。さすがに靴の予備まではないし……」
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