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「たいして仲良くないけど保育園から高校まで一緒だったらさすがにわかるだろ。どうした、お前」
「……忘れちゃった」
「一週間も学校、休んでたし」
「そうだったんだ」
「海には、近寄らなかった、のに」
「……」
ざあざあ、ざあざあ、ノイズが、ノイズが。寒さで歯がかちかちと鳴る。表情筋が凍ったようだ。上手に笑えない。わたしの母とよく似た笑みが、笑みが、作れない。
わたしの母はハルを売っていた。うつくしい人だった。母にそっくりに生まれたわたしは父に預けられ、母は船に乗ってどこかへ消えた。
うつくしいわたしにはうつくしい母の血が流れている。
うつくしい母は淫売だったので、わたしにも淫売の血が流れている。
「……おい、大丈夫か」
「……うん」
うん、ぜんぜん、大丈夫。わたしは答える。ラジオのノイズと波の音の区別がつかない。空を見上げる。ああ、やはり星がうつくしい。今すぐこの身に落ちてくれればいい。流れ星という名の隕石でわたしの身を粉々に。うつくしい、このからだを、粉々に!
「そろそろ帰れよ、お前。さすがにやばいだろ」
「なにが、やばいの」
「あんたの父さん。ブチ切れたら誰にも止められないんだから」
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