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そのままわたしに背を向けて帰ってしまった深雪くんが本当に好きだと、思ったのだけど。
「……それは、反則過ぎでしょ、深雪くん」
名前を呼ばれただけでちょっと呼吸が止まってしまった。淫売のむすめ、失格。恋は人を狂わせます。うつくしさはもっと人を狂わせます。希望は、更に。父のノートに書かれていた女の筆跡の短い詩。その通りですよ、母さん。その通りです。
ごわごわと揺れる服と髪が冷たい風に凍る。わたしは歩き出す。最寄りの交番はどこだっただろう。これから起こることを考えると頭痛がしそうなくらい面倒なことばっかりだね、と思う。
その後、母に会いに行こう。わたしに似ているという、父の愛した、母に、わたしは会いに行こう。
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