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朝、シャワーを浴びようと服を脱いで、下着姿で姿見の前に立った。下腹部に赤い花が咲いていた。
「ああ……」
なんてことない、ただ生理が始まっていて、薄いベージュの下着の花の刺繍のところに血が滲んで、赤い花に見えただけだった。私は脱衣場まで持ち込んだスマートフォンを取り出して、カメラアプリを起動させる。白くて平たい私の腹と、赤い染みのついた下着を写真に撮る。
更にSNSアプリを起動させて、いくつかのプロセスをこなす。画像添付。十数文字のメッセージ。
『卑しい赤い花が咲きました。』
今度こそお風呂に入ることにする。スマートフォンからはたくさんの通知音がした。みんな朝早いなあ、とゆっくりと思う。黒くて重たい髪の毛が今日も少し邪魔で、でも思い切って切ることは出来なかった。
あなたの母は淫売でした。だからあなたはそんな風になってはなりませんよ。
そんなことを教えこまれたはずなのに、朝からなんて卑しいことをしているのだろう、と思った。蛇口を捻って熱いお湯が出る前の冷たい水を浴びる。シスター、シスター、ごめんなさい。私を育ててくれた厳格な顔をしたシスターを思い出す。ごめんなさい、シスター。
シャワーを終えて、スマートフォンを開いたらきっと無数の通知が届いている。私の極短いメッセージを見ている人は数万人近くいて、そのうち何千人かは必ず反応したり、コメントを送ってくれる。不思議なことだ。
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